テレビでもさんざん言われていることだが、今年は日本にとって特別な年になった。
それは音楽、特にミュージシャンにしても同じだっただろうと思う。
震災の直後は音楽の事なんて考えるどころではなかった。
現実世界でも言葉を慎んだり、Twitterでさえもそういう雰囲気があった。
そういう社会の雰囲気と自分を取り巻く環境から感じた事は“閉塞感”だ。
そのような今年の状況を反映して、このベストではこの“閉塞感”を破る音楽というものにフォーカスした。
特に1~5位に選んだものは意図的にこのテーマに沿ったものにした。
あなたは今年自分を取り巻く環境から、音楽からどのようなものを感じただろうか?
1.Veni Vidi Vicious – Good Days
このバンドを一位に選んだ理由の前に今年震災が起こり、真っ先に聴いた音楽はStrokesの『Reptilia』だった。
この曲には閉塞感を打ち破るだけの力強さと勢いが感じられ、何かが始まると予感させるものがあった。
(The Strokes – Reptilia)
個人的にそれと同じ予感を感じたのがこのVeni Vidi Vicious。
彼らの楽曲にはStrokesに通ずる力強さ、疾走感、洋楽的な楽曲のセンスがある。
Strokesに近いと言うだけでなく、彼らの楽曲『Good Days』は震災とリンクするメッセージが込められた楽曲だ。
この曲には絶望と希望が散りばめられ、家族愛すら歌っている。
(Veni Vidi Vicious – Good Days (PV))
それもそのはずで、この楽曲ができた背景には、彼らの『Time is Over』という楽曲を仙台のファンの子が震災後聴いていて、その曲に励まされたというエピソードがある。
それゆえこの楽曲は現実から目をそらさないリアルがありながら、霞んでいながらも存在する希望を提示している。
だから今年を最もリアルに描いたこの作品を一位にした。
2.踊ってばかりの国 – 世界が見たい
下半期ベストで書いたことの繰り返しになるが、このバンドの良さはその辛辣な歌詞を辛辣だと感じさせないところだ。
そして彼らはこの作品で痛烈な社会批判をしている。特に『Eden』という曲では、「草原ではなくなる」や
「今はイカサマの時間だね バカは騙されるよ」
等原発とそれを取り巻くメディアを批判している。
フロントマンの下津によるこの視点が社会に対するカウンターであり、“閉塞感”を破る突破口となった。
なお歌詞だけでなくサウンド面でも冴えわたっている。
『よだれの唄(リアレンジ)』では、最初穏やかな曲調で始まるが、中盤から豊潤なロックンロールが始まる。
それはまさに60年代、初期のロックンロールのように、エネルギーに満ちていて、力強いリズムとメロディーに歌詞が乗る。
このダイナミックな楽曲もあり、下津の視点が間違いなく“閉塞感”を破る痛快な一枚だろう。
(世界が見たい / 踊ってばかりの国)
3.The Pinballs – ten bear(s)
まず誤解がないよう言っておきたいのだが、Pinballsをミッシェルのフォロワーだと捉えている人が今まで何人かいたが、彼らは00年代のロックに影響を受けたバンドだ。
その証拠に彼らが影響を受けたバンドはHivesの『ティラノサウルス・ハイヴズ』だと言う。
ガレージリバイバルバンドに影響を受けただけあって、その疾走感とアンサンブルは申し分ないが、
何よりも彼らの強みはソウルフルなボーカルにある。
彼らのプロフィールに“荒々しくも「唄心」溢れるハスキーハイトーンヴォイス”とあるように、ボーカルを活かす
ようロックンロールだけでなく、ブルースやバラード調の曲もある。
特に『タバコ』という曲が昨年最も共感した曲だった。
この曲にはちょっとしたストーリーがある。この曲の主人公は生まれた町のありきたりな未来に嫌気がさし、ラジオから流れる曲に憧れを抱いき、いつかこの町を出ようとしている。
自分の置かれた状況とリンクするこの曲に魅せられた。
自分の置かれた環境に閉塞感を感じながらも、希望を抱き生きる人に聴いて欲しいと思う。
(THE PINBALLS「tenbear」music video)
4.Andymori – 革命
andymoriのこのアルバムには震災後最もハッとさせられた。
それはこのアルバムは徹底して、飾り気のない歌詞とシンプルな演奏で貫かれているからだ。
シンプルだからこそストレートに伝わり、伝わるもの、響くものがあることを証明する一枚だ。
僕がハッとさせられたのは、『Peace』の歌詞に家族愛が歌われている事だった。
人との繋がりが希薄になった現代、こういう状況下では繋がりの大切さがよく分かる。
そういう意味でこのアルバムには震災後響く言葉がいくつもあった。
(“革命” andymori 『 peace』)
5.Washed Out – Within & Without
チルウェイブが現れた現代は、かつてパンクが出現した時よりも厳しい環境にあると言われている。
Washed Outはこの閉塞感と“戦う”のではなく、“逃げる”事を選択した。
彼自身インタビューで自分の音楽は“現実逃避”であると語っているように、彼の音楽はどこまでも美しく、夢の世界に誘う甘い快楽に満ちている。
この社会を生き抜くためには、時に現実逃避も必要かもしれない。
(Washed Out – Eyes Be Closed)
6.Yuck – Yuck
Cajun Dance Partyのダニエル・ブラムバーグは90年代のUSオルタナを鳴らし、再びシーンに帰還した。
Twitterで多くの人がこの作品をベストアルバムに選んでいるように、ダニエルのソングライティングは多くの人を魅了した。
Cajunの時とは違った“ダニエル主導”のYuckは疾走感がありながらも、アコギで聴かせる曲もありメリハリに富んでいる佳曲揃いだ。
天才ダニエル・ブラムバーグのセカンドカミングを心から祝したい。
(Yuck – Georgia)
7.The Kooks – Junk Of The Heart
“【2011Best Disc】この閉塞感を” への2件のフィードバック
Veni Vidi Vicious1位か~。
もっとオルタナっぽいやつやシューゲイザー・チルウェイヴが上の方に来るのかな、と思ったけどガレージや原始的ロックンロールを感じさせるものが上に来たんだね。特にクークスを評価してるのってこの界隈ではあまり見なかった気がしたしw なるほどなーと。
>たびけん
コメントありがとう!
去年はストロークスばっかしか聴いてなかったからこういうランキングになってしまった(笑)
Kooks評価してる人もメディアもすごい少なかったよね。
この作品はもっと取り上げられてもいいと思うんだけどねー!