東京事変 – 乗り気(『スポーツ』収録)


東京事変が解散する。

僕は今まで東京事変を特段聴いたことがなかった。

解散するということで、せっかくだからと言う気持ちで聴いたみたが、何故今までしっかり聴かなかったのかと思うほどで、自分を問い詰めたい気分になった(笑)

今日は『スポーツ』というアルバムに収められている、『乗り気』という曲について。

乗り気

この乗り気という曲は今の時代の空気を分かる人には伝わるように表現した曲のように思う。

この曲は今この時代に自分は生きているのか死んでいるのかすら分からないと言う感覚を歌ったものだ。

歌詞には

“電話を持って 電車に乗って 電動ランデヴー。

実に便利 わたしは生きてるの? 一体大丈夫?

果たして

感じているのか考えているのか

はてなしらない

だれのために存在するのか

最も自分が紛らわしい” とある。

詞にもあるように(電話)ケータイがあり、電車があり、(電波)インターネットがある。

インターネットがあるおかげで、考える必要が大幅になくなった。

人の感想を見ることで、感じることもなくなった。

便利さの裏に殺されていくものがあるということを暗に訴えている歌詞なのだろう。

これは現代特有の毒が回っている証拠だと思う。

そういえば最近読んだ、吉本隆明の真贋という本には“利の裏に毒あり”という考えが書いてあった。

氏が言うには物事には必ず利と毒があると言う。

確かに現代の利が検索すれば、何でも出てくるということならば、『乗り気』で歌われている感覚不全は毒なのだろう。

そしてこの時代の空気を“最も自分が紛らわしい”という表現で社会批判という訳ではなく、自分の感覚中心に歌
い、聴き手の共感を誘う。

社会を皮肉るというよりも、自分の感覚を皮肉る表現が分かる人には分かるような仕組みを作っているのだろう。

なおサウンドも歌詞を反映したような曲調になっている。

この曲はシンセをアンサンブルの主体としたエレポップであり、“丘サーファー”や“波”が歌詞にあるように、サーフポップを意識したような曲調だ。

サーフミュージックがサーフィンをしているときの感覚を表現したものなら、この曲はネットサーフィンをしている感覚を表現しているのではないかと思う。

だとするならこの曲はネット社会のサーフポップと言う事もできるのではないかと思う。

いずれにせよこのような鋭い歌詞をアンサンブルに乗せることができた東京事変というバンドの解散は惜しまれることだと改めて思う。

名盤詳細

発売日:2010/2/24

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