【Indies】麓健一 – コロニー


一曲目から教会音楽みたいだと思ったら、どうやらこの作品を作った麓健一は東京のクリスチャンのコミュニティーで育ったそうだ。名前を初めて聞いた人も多いと思うので説明すると、彼は都内を拠点に活動するシンガーソングライターで、繊細なボーカルと独特な歌詞が特徴的なアーティストだ。この歌い方になった背景には、幼少期に聖歌隊で活躍した経験があり、彼の「祈り」や「天使」等キリスト教の文化を思わせる歌詞も、幼ない頃の体験が大きく関係している。その儚げな歌声はRadioheadのトム・ヨークを思わせ、ピアノやアコースティックギターを多用しているのも『OK Computer』や『Amnesiac』に近い憂鬱さが感じられる。そう思ってしまうのも彼は今作で、不穏な空気を出したかったそうで、このイメージも昨年の震災の反動から生まれたものだそうだ。しかし彼は今作をただもの悲しい雰囲気で終わらせてはない。静かで透き通るような一曲目が終わった後には、いきなり2曲目に切り替わる。その瞬間「パフ」という効果音が流れ、聴き手の不意を突いてくる。その後も静かな曲の次には、アップテンポな曲が来るという曲順の工夫もある。今作を通じて麓はずっとシリアスなムードでいても息が詰まると言いたかったのではないだろうか。震災後という時代の空気も的確に捉えつつ、彼なりのユーモアも詰まった作品だ。

【麓健一「コロニー」CM vol.1】

【麓健一「コロニー」CM vol.3】

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